
22/12/24(土)21:47:27No.1007599393
こんばんはマスター。今日が何の日かご存知…………って、なあに、それ? 脚の低いテーブルに……厚手のクロスを被せて、その上から更に天板を置いてあるの? ……こ、た、つ……? ……マスターの郷里の暖房器具? へえ……、素敵ね。こじんまりとしていて……なんだか可愛らしいわ。え? あたしも入って良いの? ふふふっ、ありがとうマスター。……中に足を入れるのね? 何処でも良いのかしら? 良いのね? それなら──そうね。ふふふっ、うふふふふっ! それじゃあ、あたしはマスターの隣! 良いでしょう? 良いわよね? ええ、ええ! ありがとう! それじゃあ、失礼するわね……。あら? あら、あらあら、まあ! 良いわねこれ! サーヴァントは暑さ寒さを苦にしないのだけど、それでも暖かいのは休まるもの! いいわね、えーっと……そう、こたつ! あたし、これ好きだわ。マスターの郷里のもの、というのも素敵。……何で、って……もう、言わせないでちょうだいマスター。好きな人の故郷の物を好きになりたいと思うのは当然、でしょう?
22/12/24(土)21:47:49No.1007599587
……ふふふっ。顔が赤いわ、マスター。火照ってしまったのかしら? そうね、この中は暖かいもの。こうして……身を寄せ合っていては、お互いに火照ってしまっても仕方のないことよね……♡
~~♪ ~~♫ このオレンジ……みかん? 美味しいわね。素朴な味わいで、果実が摘みやすくて、こうやって……はい、あーん。食べさせ合いがしやすいのも良いわね。美味しい? じゃあマスター、あたしにもあーんしてちょうだい。はい、あーん……うん、ふふふっ、美味しいわ。……え? なあに? ……あの袋は何、って……ああっ! ごめんなさいマスター、すっかり忘れていたわ!
そう、そうよマスター。今日が何の日かご存知? ──その通り! クリスマス、よね! えっと、正しくはその前夜祭? イヴ……というのだったかしら?
22/12/24(土)21:48:10No.1007599744
あたしね、クリスマスってなんだかよく分かっていなかったの。ほら、カルデアのクリスマスって、冬のお祭りみたいな物じゃない? でも今日、食堂でケーキを作っていたブーディカに色々と聞いていたら、本当はただのお祭りではないのだと聞いたの。
──────まだ、あたしが生きていた頃の話。
ぴたり、と首筋に指が触れる。
普段の、冷えがちで、何処かぞくりとした感覚を受ける彼女のそれとは少し異なる、ほんのりと暖かな指。
それが首筋を、頸動脈を、「偶然そこに段差があったから」と言わんばかりの緩慢な動きでつう、となぞる。
22/12/24(土)21:48:50No.1007600078
────────ヨカナーンは、あたしに言ったわ。ガラリヤの湖の上。そこに浮かぶボートで、その使徒達へ説法を行っている方の元へと行け、と
────────でも、その時のあたしはそんな事なんて気にもしていなかった。
睦言のように、普段と変わらぬ声色で彼女は語る。
知っている。その言葉は知っている。オスカー・ワイルドが著した戯曲『サロメ』において、洗礼者ヨハネがサロメに叫んだ言葉の内の一つだ。
戯曲においてヨハネは──彼女に倣ってヨカナーンと呼ぶが──自らに興味を示した彼女を徹底的に拒絶する。
曰く、バビロンの娘。
曰く、姦淫の娘。
曰く、呪われた娘。
しかし、そんな呪詛とも取れる言葉の中で、ただ一つヨカナーンは──何を思ったのか。或いは、その罪深いと罵った少女をも救わんと願ったのか──サロメに道を示した──その教えを信じ、救われるのだ、という信仰の道を。
22/12/24(土)21:49:11No.1007600269
────────クリスマスは、その方の……ヨシュアの生まれた日なのよね。
────────あたしね、それを聞いて、少しだけ想像したの。
────────もしも、あの時……ヨカナーンへの熱/恋も、お義父様からの寵愛/束縛も、その全てを投げ捨てて……あの言葉に従っていたら、どうなっていただろう、って。
こちらの首を愛おしそうに撫でながら、夢見るように彼女は語る。
まだ貰う訳にはいかないと、そう語った首/ソレを撫でながら。
全てはもう終わったことだけれど、もしもを語ることくらいは許されるわよね? という言外の問いかけを聞きながら、こてん、と肩に頭を乗せた彼女の肩に手を回す。
────────そうしたらあたし……こうはならないで済んだのかしら、って。
────────あたし、思ってしまうのよ。
22/12/24(土)21:49:54No.1007600645
────────ねえ。
────────あなた/ヨカナーンは……、
────────マスターは、どう思う?
……それに答える資格を持つ人間は、きっと存在しない。
彼女も、きっとそれは分かっている。
だけれど、だからこそ。それでも答えを求めたからこそ彼女は問うたのだ、と分かるから。
>……わからない。
>でも……。
答えなくてはならなかった。マスターだから、という理由ではなく……心惹かれる一人の少女に応えるために。
だから……。
22/12/24(土)21:50:21No.1007600871
>そうでなかったら、
>今の君とは出会えていなかった。
>それだけは、分かる。
22/12/24(土)21:50:44No.1007601066
────────…………。
煌めく銀河のような、紫雲の瞳が覗き込んでくる。
……。
>顔、赤いよ
────────……。……いやだわ、マスター。ああ、いや! あたしを喜ばせるようなことばかり言うのが上手になって……!
>嫌い?
────────嫌いだわ、ええ嫌い! 他の子にも同じことを言っているんじゃないかしら、って心配になってしまうもの!
>君にしか言わないから大丈夫。
────────そういうところよ、もう!
22/12/24(土)21:51:38No.1007601561
はあ……顔が熱いわ……。これ、こたつ……最初は良いかと思ったけどだめ。熱くなりすぎてしまうもの。はあ……もう、胸がばくばくしてるわ……。
こたつのせいじゃないよね、って……もう! 今夜は寝かせてあげないんだから……!
もう知らない! はい、本来の目的に戻るわね! この袋!
クリスマスだもの、プレゼントを用意してきたのよ!
まずこのクーラーボックスの中身は、いつかの特異点……夏頃だったかしら? そこであたしが作っていたヨカナーン型のアイスキャンディー。
で、こっちはこの間作ってあげたサンドイッチ、サビーフ。クリスマスだもの、トマトとサニーレタスの彩りがそれらしいわよね。
後はチョコレートでしょう? それと食堂からいただいてきたケーキ、ぶどう酒……じゃなくてぶどうジュース。
……そして、今日のために作ったとっておき!
はい、ヨカナーン型のルームライト! なんと七色に輝くの! 素敵よね!
ほらご挨拶して? ボク、ヨカナーン! ヒカルヨー! はいよくできました!
……あら? なんで少しだけ苦笑いしていらっしゃるの、マスター?
22/12/24(土)21:56:05No.1007603927
もしもを想像することができるというのはある種の逃避なのかもしれませんが
しかし「それを想像できるようになる」ということそれそのものがある種の救いになることも、あるのかもしれませんね
今宵こういった会話が行われるカルデアもあるかもしれませんし、ないかもしれません
全ては「もしも」の中のお話に御座います
という訳でサロメとクリスマスイヴを過ごす怪文書でした
22/12/24(土)21:57:16No.1007604509
凄い力作だ…ありがたい…
22/12/24(土)21:59:34No.1007605719
イチャイチャしやがって…
22/12/24(土)22:01:34No.1007606782
イチャついてるだけだこれ!
22/12/24(土)22:12:09No.1007611798
>イチャついてるだけだこれ!
そうともいう
そうとしか言わないかもしれない
22/12/24(土)22:04:54No.1007608395
来たのか「」カナーン…!
22/12/24(土)22:07:15No.1007609539
緑と赤とでちょっとクリスマスっぽい色だよねと思ったことはある
22/12/24(土)22:10:27No.1007610971
サロメの怪文書助かる
22/12/24(土)22:14:25No.1007612829
>サロメの怪文書助かる
根本的に数が少ないからな…
22/12/24(土)22:18:59No.1007614813
>>サロメの怪文書助かる
>根本的に数が少ないからな…
みんなもっと怪文書量産してくれても良いのよ?
22/12/24(土)22:22:22No.1007616347
一人で10個くらい書いてるやつが言うと説得力あるな…
22/12/24(土)22:43:36No.1007626291
今年のクリスマスイベントは良シナリオだな
22/12/24(土)22:48:00No.1007628421
顔が赤いわって言われてたのが顔が赤いよって返ってくるのいい…
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アリエス
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