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20/03/01()18:40:13No.667536896

どこから話したものか。

彼と出会って、彼に助けられて、彼の元にやっとの思いで召喚されて。

まさかその翌日に退去させられるとは流石に思っていなかったのだけれど、きっとすぐに再会できる。

そう思っていた。

退去してから長い時間がたった。

いや、冥界での日々に比べると実際には2年程度の短い時間だが、彼に会えない、その一点で体感時間では数千年にも思えた。

それでも、彼は私を再度召喚してくれた。

でも、

「おかえり、エレシュキガル」

優しく微笑む彼の顔には、私の知らない翳りがあって、ひどく、傷付いていたように見えた。

 

 

 

20/03/01()18:41:03No.667537204

私のいない間、

彼は、善良でごくごく普通の青年だった彼は

多くの悲しい出来事を背負い、多くの傷を抱えながらも、必死に前に進んでいたのだと思う。

その事に私はひどくショックを受けた。

だって、彼は本当にただの青年で、善良な事だけが取り柄の普通の人間だ。

確かに世界の命運を背負ったことはある。

でも、それを運命づけられたような、神話に詠われた英雄ではない。

ただの、人間なのだ。

だというのに、彼はあの時、私に笑顔を見せた。

私には、その顔が、ひどく痛々しく見えたのだ。

 

 

 

20/03/01()18:41:16No.667537269

たしかにショックは受けた。

でも、だからと言ってそこで見て見ぬ振りをするだなんて私の、

冥界の女神としてのプライドが許さない。

ここ、ノウムカルデアと名を変えた場所で、情報を集めることにする。

図書館、そんなところあったかな?でもちょうどよかった。

カルデア退去から今日までの記録を探して、見ることにする。

 

 

 

20/03/01()18:41:48No.667537430

「こんなの、こんなことって、あんまりなのだわ……!」

記録は想像以上だった。

異界の神、異聞帯での戦い、そして。

そして、多くの出会いと別れ。

こんなこと、ただの青年だった彼が背負えることではない。

だというのに、彼は折れることすら許されないのだ。

溢れていた涙を拭う。

憐みの涙ではない。それは彼への侮辱になる。

この涙は己の不甲斐なさと、彼の力になれなかったことへの怒りの涙。

彼にはシールダーのあの子がついている。でもきっとそれだけでは足りない。

ならば、私がやるべきことは一つしかない。

 

 

 

20/03/01()18:42:47No.667537805

「大丈夫、私ならやれるのだわ……!」

彼の部屋の前、自分を勇気付ける。

扉をノックし応答を待つ。

「はい、どうぞー」

気の抜けた彼の声と共に扉が開く。

「えれちゃん、どうかしたの?」

「えっと、その、……」

パニックだ。早々なんと言えばいいのか頭から消えた。

「?」

「その!膝枕、させてください!!」

私は一体なんてことを口走ってしまったのだろうか。

 

 

 

20/03/01()18:42:57No.667537874

とんでもないことを口走って、

彼は苦笑いをしてからどういうわけか「いいよ」と承諾してくれた。

膝枕をしてから、数分で彼は眠りについてしまった。

きっと疲れていたのだろう。

穏やかな寝顔を見ていると私もうつらうつらとしてしまう。

ふと気がつけば、私も眠ってしまった。

 

 

 

20/03/01()18:43:49No.667538128

心地良い気分。

でも微かな違和感と視線を感じる。

なんでだろうか。

いや、いやいや!ちがうのだわ!私寝てちゃダメなのだわ!

止まりかけた脳が急速に覚醒する。

「……おはよう、女神様」

「えっと、おはようございます……」

かぁっと顔が赤くなる。

「あの、私どれくらい寝てました……?」

恐る恐る、私の膝から私の顔を見上げる彼に問う。

「俺の目が覚めてから15分くらい……?」

15分、その間彼に寝顔を好き放題に見られていた。

これじゃ、本当に何をしにきたのかわからない。

「私、ダメな女神なのだわ……」

 

 

 

20/03/01()18:44:00No.667538185

「……えれちゃん、ありがとう」

「お礼なんて言われることはしてないのだわ……」

「俺を励まそうとしたことは、わかるよ。ありがとう」

「マスター……」

本当に、この人は善良で、素敵な人だ。

「私、貴方のことが大好きです。藤丸立香さん」

私は、この人を好きになってよかった。

 

 

 

20/03/01()18:44:21No.667538294

……というような事を天井裏のニンジャ共をしばき倒してこっそり眺めていたのだけれど、

甘ったるい言葉のやり取りをするだけで進展がなくて焦ったくて。

それで私、やってしまったの。

愛の妙薬を空気散布するためにぐいっと一口で飲んでから自爆したわ。

だからその後のことは途中からしか見れてないのだけれど、

流石はエレシュキガル、世界最古の官能小説の主役にして無限の性欲を持つとされる女神ね。

そりゃあもう凄かったわ。最後の方は後輩泣いてたもの。

そうして生まれたのがお前よ、後輩の子供。

 

 

 

20/03/01()18:47:24No.667539201

最後の最後にパイセン…!?

 

 

 

20/03/01()18:47:28No.667539222

それ2人が寝てる時に飲ませば済んだ話でしたよね…?

 

 

 

20/03/01()18:47:41No.667539301

血煙で散布しちゃダメだよ!!

 

 

 

20/03/01()18:49:40No.667539990

パイセン自爆ノルマのためにわざわざ薬用意してきたな?

 

 

 

20/03/01()18:49:59No.667540088

>……というような事を天井裏のニンジャ共をしばき倒してこっそり眺めていたのだけれど、

唐突にニンジャが出てきたらダメな話だったか…

 

 

 

20/03/01()18:51:08No.667540474

復刻で始めて触れたマスター視点か

 

 

 

20/03/01()18:51:50No.667540694

>復刻で始めて触れたマスター視点か

復刻でようやく引けたマスター視点だよ!

 

 

 

20/03/01()18:57:13No.667542419

そうさ人理を取り戻す旅はつらい事ばかりじゃない

5を引ける喜びだってある!

 

 

 

20/03/01()19:03:32No.667544386

時代は変わった…愛の霊薬と言えば上姉様だった時代は変わった…

別に不満はない

 

 

 

20/03/01()19:03:53No.667544494

これさぁパイセンも二人に混じっちゃってない?

 

 

 

20/03/01()19:05:10No.667544973

>これさぁパイセンも二人に混じっちゃってない?

そうよ、後輩の子供であり私の子供。

 

 

 

20/03/01()19:11:38No.667547267

パイセンはさぁ…

 

 

 

20/03/01()19:32:40No.667555635

女神と子供を作るなんてやめとけマスター!