1612271478775s

21/02/02()22:11:18No.771080286

 私がノウム・カルデアに来てからそろそろ半年が過ぎようとしていた。何がどこにあるのか、右も左もわからなかった最初の頃と比べれば、ここにも随分慣れてきてまるで自宅のように馴染み深い場所になった。魔術の研究が自由にできるのもいいし、なにより3度のご飯はほっぺたが落ちそうなほど美味しいのが最高!

 もちろん、趣味嗜好だけでなく訓練や仕事を任されることもある。私は新参だからということで大きな作戦にはまだ参加できていないけど、それでも日々の訓練では大きな失敗はしていないし、自覚はないけど特異点で呼び出されている私の影は、マスターの大きな助けになっているらしい。

 

 

 

21/02/02()22:11:47No.771080443

 ━━そう、マスター。この私にできた初めてできた友人。私がここで肩身狭く過ごすようなことになっていないのは彼のおかげだ。

 カルデアの偉い方々によると、カルデアのデータベースに私の霊基の記録は存在しないらしい。つまり私は、彼らとまだ出会ってはおらず、未来の縁によってカルデアに召喚されたということになるのだとか。

 そうした未来の縁で召喚された英霊もいることはいるのらしいけど、私はその中でも特例とのことで、事実、私には知り合いや顔見知り━━に似たような人は何人かいるけれど━━はほとんどいない。

 

 

 

21/02/02()22:12:16No.771080615

 僅かな知り合いのような立場のマーリンには話しかけてみたものの、『ふーむ、私が君に助言をするというのは、なんとも面映いものだがね。まぁ、あまり気にしないことさ!時と場合と運勢によってはこういったことは常に起こりうるものだとも。そう、具体的に言えばストーリー進行━━』とよくわからないことを言っている最中に、フォウフォウ鳴く小動物の襲撃を受けて話は有耶無耶に終わってしまった。

 そんな調子だから、私にも分け隔てなく接してくれているマスターは今となっては気の置けない友人となっている。

 

 

 

21/02/02()22:12:44No.771080760

 そんなある日、深夜に小腹が空いて食堂に摘み食いをしに行った時のこと。番をしていた赤い弓兵さんに追い返されて未練たらたらながらも自分の部屋に帰る途中、シミュレーター室の前を通りがかった。

 マスターの戦闘訓練で何度か利用したことがあるから、その再現性の高さは体験済みだ。サーヴァントの方々の中には時間をとって私用で利用する人もいると聞くけど、私はまだその用途で使用したことはない。そのシミュレーター室が起動していた。

 こんな深夜に一体誰が利用しているのだろうか。気になって入室ログを確認する。

「・・・マスター?」

 ログには藤丸立香、マスターの名前が記されていた。マスターが今日のように夜更かしをすることは滅多にない。何か目的があるのだろうか。それが気になって、そっとシミュレーター室の扉を開け、中の様子を伺った。

 

 

 

21/02/02()22:13:19No.771080976

 扉を開けた瞬間、冷気が肌を撫でて「ひっ」と声が出る。中を覗き込むと、何処か山の豪雪地帯なのか、見通しのいい、雪が降り積もった夜の世界が広がっていた。マスターはそんな場所で一人、背中を向けて座り込んでいた。

「・・・?」

 白化粧をした山々の景色を眺めているわけではないらしい。むしろ、視線は頭上に向いている。その視線を辿って上を見上げ、思わず「うわぁ・・・!」と声を上げた。

 夜空には今にも零れ落ちてきそうな満天の星が煌めき、乳白色の銀河が空を覆っている。ここに召喚されてから初めて見る星空だった。と、見惚れていると。

「アルトリア?」

 そう声をかけられた。我に返ると、マスターが怪訝そうな表情でこちらに顔を向けている。どうやら先程の声で気づかれたらしい。

 

 

 

21/02/02()22:13:50No.771081153

「あ、えっと、すいません!マスターが何をしているのか気になって━━」

 私の謝罪を「いいよいいよ」と途中で遮り、マスターは微笑んだ。

「一人でいるのも寂しかったし、アルトリアも一緒にどう?」

「いいんですか?」

「もちろん」

「━━ありがとうございます!ではお言葉に甘えて」

 ゆっくりとマスターの隣に腰を下ろす。そして改めてマスターに尋ねた。

「星を見てたんですか?」

「うん、ノウム・カルデアだと外が見えないからね。シミュレーターの訓練中とかレイシフト先だとゆっくりできる時間も少ないから、時々誰もいない時に使ってるんだ」

「なるほど・・・ところでここは何処なのですか?時代設定はよくわかりませんが、景色から察するに北欧かチベットあたりの高山でしょうか?」

 そう尋ねると、マスターは少し寂しそうな、いや、辛そうな顔になって答えた。

 

 

 

21/02/02()22:14:19No.771081327

「ううん、南極。カルデア━━前のカルデアがあった場所」

「あ・・・すみません」

「大丈夫、気にしないで。━━オレもあそこでじっくりと何度も星空を見たことはないんだ。あっちはほぼ毎日吹雪いてたからね。見れたのは一度だけ、人理修復した日の夜でさ。すごく綺麗だったから、またこうして見ようと思って」

「そう・・・なんですね」

 なんと答えたらいいのかわからない。それどころか、何を言ってもマスターを傷つけてしまうのではないだろうか。そう思い悩んでいると、「星座」とマスターが呟いた。

「星座?」

「うん、南極星とかみなみじゅうじ座とか。前に色々星座を教えてもらったんだけど、いろんなことがありすぎて、どれがどれだか忘れちゃった」

 ━━あぁ、そうだ。

 

 

 

21/02/02()22:14:41No.771081453

「なら、わたしと改めて勉強しましょう!」

「アルトリアと?」

「えぇ、わたしはこれでも星を探すのは得意なのですよ?・・・とはいえ、こうも星が多いとわたしもどれがどれだか忘れてしまいます。ですので、もしわたしが目指すべき星を忘れてしまった時は、あなたがその星を翳してください。そうすれば、わたしが何処にあっても探し出しますから!」

 マスターは呆気に取られたような表情でわたしのことを何秒か見上げて、それから満面の笑顔で頷いた。

「うん、そうする。ありがとう」

 ━━これで何かが変わるのか、それとも何も変わらないのか。わたしにはわからないけど、とりあえず今は星を学ぼう。マスターが翳した星を探し出せるように。

 

 

 

21/02/02()22:16:49No.771082216

キャストリアとマスターが星を見る話です

キャストリア第一・ニ臨の宝具ボイスから着想を得て書きました

キャストリアとぐだの関係が見たいので六章実装お願いします

 

 

 

21/02/02()22:17:05No.771082301

6章まだかな…

 

 

21/02/02()22:17:22No.771082396

いい・・・

 

 

 

21/02/02()22:18:08No.771082660

まずはふたご座からだな!

 

 

 

21/02/02()22:25:25No.771085020

よかった・・・お友達で暴走してない

 

 

 

21/02/02()22:26:30No.771085386

星座の由来そのものな人とか居るしカルデアで星の知識はありゃ楽しいだろうな

 

 

 

21/02/02()22:29:56No.771086592

どれほど遠く穢れても

 

 

 

21/02/02()22:42:45No.771091087

誰に呼ばれるまでもなく、あなたは星を翳すでしょう。

どれほど遠く穢れても、わたしは星を探すのです。

 

ここリンクしてるのいいよね...