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20/05/23()21:38:56No.692366657

「はあっ、はあっ……!」

朝の廊下を駆け抜ける。時折すれ違う人々からは奇異な目を向けられるが、そんな物は御構い無し。

何せマスターの一大事なのだ。朝食の席で見かけなかったからおかしいとは思ったものの、まさか体調を崩してしまっていたとは。毎日の様に顔を合わせていたと言うのに気付けなかった自分が情けない。

「はあ……っ、立香さんっ!」

漸く着いた部屋の前。一息ついて乱れた呼吸を整える間ももどかしく、勢いよく扉を開けて転がり込む――もしも彼が眠っていたら酷く迷惑だっただろうと気付いたのは、彼と目が合ってからだった。

「けほけほっ……え、沖田さん!?

出迎えたのは咳込む音と驚きの声。彼はベッドの上で本を読んでいた。

 

 

 

20/05/23()21:39:06No.692366741

「ただの、風邪……?」

「そうみたい。季節の変わり目……はカルデアでは関係ないか。多分、ちょっと疲れが溜まってたんだと思う……けほけほっ」

ベッドの傍らに腰を下ろして彼の話を聞いてみれば、あまり大事ではなかったようで取り敢えず一安心。

「医療スタッフの皆に検査してもらったし、多分大丈夫だよ」

「それなら良いのですが……」

心配するような事は何も無いとばかりに笑顔を見せる。時折咳き込んでいるのが気がかりだが、彼らに診てもらったのなら大丈夫だろう。普段お世話になっている分、他の人よりも自信を持って言える。

「って言うか、よく分かったね。俺が体調崩してるって事」

「偶然ですよ。今朝もちょっと体調を崩してお世話になりまして。その時に立香さんの問診結果みたいなのが目に入ったんです」

「あー……医務室通いは伊達じゃないって事か」

「まあ、そう言う事ですね。『病弱』も偶には役に……立ったんですかね……?」

「あ、あはは……」

 

 

 

20/05/23()21:39:22No.692366885

「ところで立香さん。どうして黙っていたんですか?」

「え、何の事……?」

「何の事、じゃないですよ。体調が悪いなら、黙ってないでちゃんと言って下さい。気付けなかった私も私ですけど……」

「あー、その事かぁ……。多分、今日中には回復するだろうし、あんまり心配かけたくないから黙ってたって言うか……まあ、うん……」

いつになく歯切れの悪い言い訳の言葉は、彼の本心が他所にある事を悟らせるには十分だった。いつもの彼ならもっと煙に巻くような物言いをしただろう。多分、今の彼の言葉が本心でないことは付き合いが浅くても分かるに違いない……そう思える程に分かりやすい態度。体調が悪いせいだろうか。

「はぁ……立香さんっ。隠し事はしないで下さい。私達の仲じゃないですか」

半身を乗り出してずいと一つ詰め寄れば、彼は決まりが悪そうに顔を逸らす。そのまま視線を逸らさずにいると、しばらくは言い淀んだように口元をもごもごとさせていたが、やがて観念した様子で話し始めた。

 

 

 

20/05/23()21:39:34No.692366985

「だって……格好悪い所、見られたくなかったし……」

「…………はあ?」

本気で何を言っているのか理解出来なくて、思わず漫画みたいな大げさな反応をしてしまう。

「な……何ですか、それ。そんな、下らない……」

「むっ。男の子には意地とかプライドとか、色々とあるんだよっ」

一瞬、この期に及んで冗談を、と思ったが、彼は大真面目だったらしい。こちらの反応が気に食わなかったのか、よく分からない捨て台詞の様な何かと共に拗ねた様にそっぽを向いてしまった。

 

 

 

20/05/23()21:39:51No.692367146

「あー……えっと、下らないなんて言ってすみません。立香さんも男の子ですもんね、格好つけたい時もありますよね!」

「……ちょっと馬鹿にしてない?」

「いえ、まさかそんな!」

じとりと睨む様な視線は完全に拗ねた子供のソレで。さっきと言い今と言い、今日の彼は妙に子供っぽい。体調が優れないせいだろうか。体が弱っていると、人肌が恋しかったり、子供っぽいわがままを言ってみたりするものだ。正直、身に覚えがある。……あり過ぎるくらいに。

年相応でちょっと可愛いな、なんて思ってしまうのはさておき、拗ねたままで置いておくのもよろしくないのでなだめる言葉を探す。そもそもは彼が、寝込んでいる自分は格好悪い、と思っているわけだから……。

 

 

 

20/05/23()21:40:10No.692367305

「ん~、と……例えばですよ、立香さん」

「?」

「私が体調を崩して寝込んでいるとして。あなたはそれを見て格好悪いな、なんて思いますか?」

「別に思わないけど……」

「どうしてですか?」

「どうして、って……そんな風には思わないのは当たり前だよ。心配するのが普通でしょ?」

「そう、それと同じですよ。私だってあなたが体調を崩したくらいで格好悪いなんて思ったりしませんし、心配します。一緒ですよ、一緒」

「ん……でも、俺は男だし……」

「それを言ったら私はサーヴァントですよ?それに、男の人は寝込んだら駄目なんですか?重ねて言いますけど、私はあなたの事を格好悪いなんて思いません」

「……ん」

「寧ろ、辛い時くらい頼りにして欲しいです。……まあ、私みたいなのじゃ頼りにし辛いとは思いますけど、なんて」

「……」

「今の、フォローするところですよ」

「あはは……」

「何とも言えない笑顔じゃ誤魔化せませんよ……」

 

 

 

20/05/23()21:40:27No.692367458

「……っと、長く喋りすぎましたかね。それじゃあそろそろ私はお暇します。ゆっくり眠って――」

体調が悪いのにあまり長い事話し込むのも如何なものか、そう思いキリのいいところで話を切り上げて席を立とうとした時、袖を引っ張られた。見やれば彼の手が、離すまいと言わんばかりにぎゅっと掴んでいる。

「立香さん……?」

「その……手を、握って欲しい、かな」

「……ふふっ」

向こうを向いたまま、ぽつりと溢れた言葉。こんな時でも甘え下手な彼に、胸の辺りが少し暖かくなって、思わず笑みが溢れてしまう。これが母性というやつだろうか。

「?何で笑うの……?」

「いえ、何でもありませんとも。こういう時は人の体温が恋しいものですよね」

「……うん。だから、俺が寝るまでの間でいいから、側にいて。手を握って下さい」

「ふふっ……ええ、お任せ下さい。何なら子守唄も付けましょうか?」

「……やっぱり馬鹿にしてるでしょ」

「まさか」

「本当かなぁ……」

「本当ですよ。さ、早く眠らないと。治るものも治りませんよ?」

「……ん」

 

 

 

20/05/23()21:40:45No.692367614

彼の要望通りに手を握ってから、幾ばくもせずに穏やかな寝息が聞こえた。けれど、手を離すのは少々忍びない。折角わがままを言ってくれたのだから、もう少しだけ付き合っていたい、なんて思ってみたり。

じっと彼の寝顔を見つめる。こうして眠っている時は年相応のあどけなさが残っていて、ちょっと悪戯してみたくなる。

「……えいっ」

「すぅ……ん、んぅ……?」

額に滲んだ汗を拭き取るついでに、頰を人差し指でそっとつつく。自分のソレとは違った少し固い感触に、やっぱり男の子なんだなぁ、なんて。

頰にそっと手を添える。熱く感じられたのは彼の体温か、はたまた私のか。

「誰も、見ていませんよね……?」

風邪は誰かに移した方が治りが早いとも言うし。……それが迷信だと知ってはいるけれど、今ばかりは知らないフリを決め込む。

「……早く元気になって下さいね、立香さん」

「ん――」

 

 

 

20/05/23()21:51:31No.692373196そうだねx

長い!

でもこういうのいいよね…

 

 

 

20/05/23()22:01:55No.692378009

反撃に弱い沖田さんだが

弱ってるマスターは抵抗できまい…

 

 

 

20/05/23()22:05:54No.692379982

>反撃に弱い沖田さんだが

>弱ってるマスターは抵抗できまい…

沖田のやつ…そこまで考えて…!

 

 

 

20/05/23()22:04:15No.692379157

沖田ァ!看病にかこつけてエッチな事しようとしとるじゃろ!

 

 

 

20/05/23()22:05:57No.692380019

>沖田ァ!看病にかこつけてエッチな事しようとしとるじゃろ!

(指で輪を作り指を出し入れするノッブ)

 

 

 

20/05/23()22:07:13No.692380664

>>沖田ァ!看病にかこつけてエッチな事しようとしとるじゃろ!

>(指で輪を作り指を出し入れするノッブ)

信!即!斬!

 

 

 

20/05/23()22:09:24No.692381745

>(指で輪を作り指を出し入れするノッブ)

同僚を煽るおっさんすぎる…

 

 

 

20/05/23()22:05:46No.692379915

ぐだぐだイベで素でマスターへの距離が近い沖田さん良いよね…

明治イベが初ぐだぐだだったから何でこんなに距離近めなんだろう…?って思ってたけど

 

 

 

20/05/23()22:24:13No.692389295

>ぐだぐだイベで素でマスターへの距離が近い沖田さん良いよね…

マイルームでも結構近いぞ

通常も水着もな!

 

 

 

20/05/23()22:10:43No.692382432

>体調が優れないせいだろうか。体が弱っていると、人肌が恋しかったり、子供っぽいわがままを言ってみたりするものだ。正直、身に覚えがある。……あり過ぎるくらいに。

>年相応でちょっと可愛いな、なんて思ってしまう

なんかこう素朴にお姉さんみたいな態度を取られると少女漫画みたいで気ぶりたくなってくるな…

 

 

 

20/05/23()22:13:51No.692383958

この後沖田さんが看病される側になる展開があると見たね

…いつもの事だったわ