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20/04/28()20:00:30 No.683787226

以前投下したぐだキリ怪文書の続きのようなものになります

 

 

 

20/04/28()20:00:44 No.683787310

窓の外は今日も大雪。真っ白な世界。

このカルデアでは、景色の移り変わりで季節を感じることは到底できないようだ。

こうして自分の目で毎日代り映えのしない景色を見ていると、

日本は本当に恵まれた国だったのだと実感する。

 

まあ私には、ちょっと前に春がやってきたんですけどね!!

「一体何を眺めているんだい?面白そうなものは見当たらないが?」

 

そう言って私に声をかけた黄金色の髪をしたまつ毛の長い男性。

彼こそが私の『彼氏』であるキリシュタリア・ヴォーダイムその人だ。

 

 

 

20/04/28()20:00:57 No.683787388

カルデアという施設は広く、大きい。

大量の設備があり、大量の部屋があり、大量の廊下がある。

私たちはカルデアの外周部分にある廊下を2人歩いていた。

特にこの先に用事があるのではなく、用事を済ませた後でもない。

あえて言うなら、こうして2人歩くことが大切な用事なのだ。

 

「雪、オーロラ、白銀の大地………美しいと思っていた景色も、すっかり見慣れてしまったね」

 

私に語り掛けるような、自分自身に呟いているような、そんな声がすぐ隣から聞こえる。

繋いだ手からは寒々とした景色を吹き飛ばすかのような温もりが伝わってくる。

私からも温もりが伝われと、絡めた指に少しだけ力を入れてみる。

 

すぐにキリシュからも握り返してくれて、それが嬉しくて、

思わず笑みが零れてしまう。

私たちは今、そんな日々を過ごしている。

 

 

 

20/04/28()20:01:07 No.683787446

キリシュ達が挑んだ初めてのレイシフトは無事成功した。

 

前日になってキリシュが『絶対全員無事帰還決起集会』を開こうとしたり、レフ教授がいなくなったりと

大小様々なトラブルがあったものの、レイシフトそのものは無事成功。

私たちは人理修復のための第1歩を踏み出したのだった。

 

………とは言うものの、私自身は留守番だったので私が何かしたというわけではないのだけれど。

 

ともかく、現在カルデアは次のレイシフトに向けた準備中であり、

色々とやらなければいけないことは多いけれど、こうして2人の時間を作ることも無理なく可能な訳で、

となるとやっぱりデートっぽいのはしたいのだけど、でもカルデアの外には文字通り何も無いから何処にも行けず、

そんなわけで私たちは人の多い休憩スペースで話でもするか、互いの部屋にお邪魔するか、

人通りの少ない場所で散歩するぐらいしかできないのである。

 

 

 

20/04/28()20:01:20 No.683787520

キリシュはさ、人理修復が終わったらやりたいことってある?

 

「君と色々な物を見に行きたいな。

何を見ても、何を体験しても、きっと素晴らしい体験になるだろう」

何気なく聞いた一言に、大量の砂糖で返されてしまった。

私の彼氏は天然な一面もあるので、真に心臓に悪い。

ほら、さっきから自分の心臓の鼓動が聞こえてしまっているじゃないか。

 

「だが、少し心配なこともある。いや、不安と言ったほうが正しいかな?」

 

どうしたの、キリシュ?不安って何が?

 

 

 

20/04/28()20:02:17 No.683787856

「さっき、私は窓の外の景色を、見慣れたと言ったじゃないか」

 

言ったね?

 

「初めて見たとき、確かに私は美しいと思ったのだよ。

空から降ってくる白い結晶が一面に積もり、ただただ静かな色だけが広がっていた。

本当に………特別に美しかった」

 

うん。私も始めて見たときは綺麗だと思ったよ。

 

「ああ、初日はただ見惚れていた。

次の日は耐寒魔術を使って、足跡を付けに行った。その次の日、さらに次の日。

私は雪を楽しんでいたんだよ」

 

うん。言いたいことは色々あるけど、キリシュは雪が好きだったんだね。

 

 

 

20/04/28()20:02:39 No.683787997

「ああ、好きだった。好きだったんだよ。

だがこのカルデアでずっと過ごしている内に、私は雪に特別な感情を抱かなくなった。

雪が降っているこの景色は、当たり前の物になってしまったんだ」

 

………それが、怖いの?

 

「そうだね、怖い。

君と美しい物を見に行って、始めはただそれだけで良いだろう。

だが、時を重ねていく内にそうじゃなくなってしまったら。

君と見る景色が、ただの当たり前の景色になってしまったら。

感動とか、喜びとか、そういった感情を感じられなくなってしまったら。

………それが不安なんだ」

 

 

 

20/04/28()20:02:53 No.683788072

そう言って、キリシュは口を閉じてしまった。

珍しく弱音を吐いてしまったことを悔いているのか、

彼女に情けない姿を見せてしまったことを恥じているのか、

それは私には分からない。

キリシュの心を見通すことなんてできない。

 

でも1つだけ分かることがある。

キリシュの不安は、お門違いだということだ。

 

 

ねえ、キリシュ。私は、それが悪いことだとは思わないな。

 

「そうかい?私にとっては人理修復と並ぶぐらいの悩みなのだが」

 

確かにこれからずっと一緒に居たら、目新しい感動とかは無くなっちゃうかもしれないけど。

 

 

 

20/04/28()20:03:06 No.683788151

それって、私が隣にいることが『当たり前』になってるってことだよね?

 

 

 

20/04/28()20:03:32 No.683788296

だから、私は嬉しいな。キリシュにとっての当たり前になれるならさ。

 

「私にとっての、当たり前………か」

 

キリシュが私と見る景色も、私がキリシュと見る景色も、いつか特別じゃなくて当たり前になっていくの。

そして、それから先ずーっと2人でいることが当たり前になるんだよ。

 

「そうか、当たり前の景色は悪い物では無かったのか。

こんな単純な事にも気づかなかったのか」

 

ねえ、キリシュ。

 

「何だい?」

 

これからも、当たり前のようにずっとよろしくね?

 

 

 

20/04/28()20:04:00 No.683788449

そう言って、私は彼の腕に抱きつく。

窓の外は相変わらず寒々しい景色だけど、彼の体は汗ばんできそうなほど温かかった。

キリシュの心を見通すことができない私には、何故こんなにもキリシュの体が熱くなっているのかは分からない。

だが、もし相手の心を読むような能力が私にあったのなら、こんな声が聞こえてきただろう。

何気なく呟いた弱音に、大量の砂糖で返されてしまった。

私の彼女は天然な一面もあるので、真に心臓に悪い。

ほら、さっきから自分の心臓の鼓動が聞こえてしまっているじゃないか。

 

 

 

20/04/28()20:04:14 No.683788541

おわり

 

 

 

20/04/28()20:06:53 No.683789441

少女漫画のような甘酸っぱさで初々しいな