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0/03/10()23:46:05No.670099220

「――っ、くしっ!」

微小な特異点からの帰り道、隣を歩くマスターが不意に大きなくしゃみ。

「ん……寒っ」

春先の冷たい風が茜色に染まった草原を揺らす。遮る物のない場所であれば尚更の事、彼は口元に当てていた手をポケットに突っ込み、首を竦めた。

「マスター。そうしていてはいざという時に対応出来ませんよ?」

「そうは言っても寒いものは寒いし……」

帰るまでは何があるかわからないのだから、と咎めてみても何処吹く風。そうして笑っている方が彼らしいけれど、まるで馬耳東風――何て思った瞬間、一際強い風が吹く。

 

 

 

20/03/10()23:46:25No.670099315

あっちの方角は東だったっけ……靡く髪とマフラーを抑えて並んだ影を見遣ると、手に温かな感触。彼の手が重なっていた。驚いて顔を上げればいたずらな笑顔が映る。少し赤くなっているのは夕焼けのせいか、寒さのせいか。

「ポケットから手は出したし、これでいいよね?」

そう言う事ではない。第一これでは、何かあった時に私まで対応出来なくなってしまう――胸に浮かんだ言葉は、鼓動に紛れて消えた。

 

 

 

20/03/10()23:46:40No.670099369

返す言葉の代わりに指を絡める。驚いたようにぴくりと力んだ指はしかし、優しく包み込むように。

無性に恥ずかしくて、そっぽを向いてマフラーを引き上げた。

 

さあと吹き抜けた風が、火照った顔を冷ましていく。

 

――夕暮れ時、茜色に染まる草原。繋いだ手を離さずに、出来るだけゆっくり歩いた。

 

 

 

20/03/11()00:00:08No.670103191

こういう甘酸っぱいの好き

 

 

 

20/03/11()00:03:31No.670104238

青春しおって

 

 

 

20/03/11()00:05:13No.670104743

ぐだ沖にはどれだけ青春させてもよい

 

 

 

20/03/11()00:15:23No.670107558

こういう距離感好き