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19/08/05()00:16:28 No.612136902

夏祭り、マスターを置いてスリ犯の背を追う

動きやすい白いシャツと柿色の半ズボンの背中はもう覚えた

たとえどれほど人ごみに紛れようとしようが決して見逃す事は無い

花火を見上げ立ち止まる人をかわし、自由に屋台を行き来する人にぶつかる事無く、速度を殺す事もなく、最短の距離を最低の力で駆け抜ける

それはあちらも同じ

無駄な動きは一切無く、正に理想的な逃げ足だ

人ごみの中を逃げる術をよく心得ているスリ犯だった

 

しかし――――追いつける

サーヴァントとして顕現したこの身に、人の身で行う速度など敵ではない

それでも間には多くの人間が立っている

 

 

 

19/08/05()00:17:12 No.612137095

大きく前に出した足に力をこめて、人の頭よりも高く飛び上がった

その場の誰もが何事かとこちらを見ているが構わない、そうやってスリ犯の前へと割り込んで強く見据える

人々は避けるように場所を譲り、スリ犯と私の間を邪魔するものはもう無かった

 

間抜けなら此処で何らかの口上を垂れるのかもしれない

だがそんな事を言う理由は無い、間髪入れず再度前へ──スリ犯へと勢いよく迫る

三歩の距離、ほんの一歩が光の如く、瞬きする間も無く

生身の人間にサーヴァントの動きを捉えられるはずもなく、スリ犯は何が起きたのか理解出来ないまま地に伏せるだろう

殺さない、この人通りの中で殺しは出来ない

あと一歩────! ただこの鞘に収めたままの刀を抜いて、柄頭でスリ犯の鳩尾で食い破るように────そして喉奥から込み上げるものに『まずい』と私は意識した

 

 

 

19/08/05()00:17:34 No.612137198

「こふっ――!」

自分の意思を裏切るように鉄の味が口の中に溢れて、たまらず口から吐き出す

────一瞬、足を止めてしまった

 

本当に刹那のような時間、でもそれは歴戦のスリ犯にとっては死を意識したが故の力を覚醒させてしまうには、十分過ぎる時間で

手を伸ばしても既に遠かった

覚えた背中が遠ざかり、反対に周囲で見ていた人々が私を見て次々と悲鳴をあげる

吐いた血が平穏ばかりの神社の地面を穢して広がり、連鎖するように人々が私に注目していく

このままではスリを捕まえるどころか、せっかくの夏祭りが台無しとなってしまう

 

「待ち、なさい!」

自分の体が恨めしい、どうしてこんな肝心なときに血を吐いてしまったのだろう

何事も無かったかのように口元の血を拭い、鞘を杖代わりに立ち上がる

ただのスリ犯、池田屋に押し入った時に比べれば何でも無いはずなのに、どうして体が動かなかったのか

 

 

 

19/08/05()00:17:55 No.612137289

「あの、その血大丈夫ですか……?」

明らかに私の様子がおかしかったからか甚平姿の人が話しかけてくる

「ちょっと舌を噛んだだけです!」

「えっ、どう見ても噛んだ程度には、」

「人より血の気が多いんです!」

黙らせるように大声をあげる、そうすれば大抵の人が黙るし、この人もそうだった

さっきの跳躍もあって撮影か舞台だと思われたのもあると思う

でも、このままでは救急車が呼ばれてしまうかもしれない

それではダメだ、夏祭りの人々の安全を守るのが仕事だったのに、逆にその人々に心配されるのが私では、何の意味も無い

 

ああ、でも――――

もしかしたらいい加減そろそろマスターがちびノブ達を動かして、捕まえるように働いていてくれるのかもしれない

そうだったら、とても良(わる)いのに────

 

 

 

19/08/05()00:19:05 No.612137591

────人垣から青と白の羽織の人物が現れた

「沖田さん大丈夫!?」

見間違えるまでもなくそれは私が貸した羽織を着けたマスターで、私に駆け寄る

そして当たり前のように私に肩を貸してくれた

「いつもの事です」

「それは分かってるけど、休んだ方が良いんじゃない……? ちびノブ達にも向かってもらってるんだから」

背中にマスターの体温を感じている私が居る、今はそんな場合ではないというのに

「大丈夫です、それよりも今のを追わないと」

スリ犯が逃げて行った方を見つめて歩き出す

あの背中と正面は絶対に忘れない、今ならまだ間に合う

 

「マスター、行きます」

絶対に捕まえなければならない、一度は目の前にした獲物を逃してしまうなんて、とんでもない失態だった

マスターにもこんな使えないところは見られたくなかった

 

 

 

19/08/05()00:19:38 No.612137714

「――――沖田さん」

止めるような声、いいや『ような』というのは間違いだと思う

マスターの顔を見るまでもなく分かること

だけど私は最後まで戦いたい、戦えないまま救護場に運ばれて医者の世話になりたくはなかった

「行きます。 沖田さんは一人でも大丈夫ですから」

口の中は血の味でいっぱいで、全身から血が少しだけ減ってしまったような感覚

「そうじゃなくて」

マスターが自分の手を前にかざす

少し暗い、夕闇の中で微かに輝くような赤い――令呪の光

「この令呪には本来の令呪にあるような強制力はあまり無いって皆から言われてたんだけど……それでも、少しの間だけでも毒や病に侵されたサーヴァントを楽にさせられるんじゃないかなって、思ったんだけどさ。 ―――どうする?」

どうする? なんて、言われて

私ははっとしてマスターの顔を見た

 

 

 

19/08/05()00:20:00 No.612137806

────マスターは優しい人だと思う

この人と人の争いが少なくなって、ただの殴りあいの喧嘩しか経験しないような、それが当たり前になった時代に生きる、ごく普通な人間

人理焼却だ凍結だ何だという事態に駆り出されて、それでも狂気に染まらないような、そんな普通な人

だっていうのにどうしてそうやって笑えるのだろう

 

どうして、こんなに血で満たされた霊基に染み入るように言葉をかけてくれるのか

私には分からない、この少し暖かくなる胸の心も、何も

 

だけど。

 

「はい、マスター。 令呪をお願いします!」

「うん沖田さん。 貴方の誠の旗を此処に示して――――!」

 

 

 

19/08/05()00:20:48 No.612138005

なんか長くなったけど沖田さんルートはあと一話か二話で終わります

沖田さん水着まだですか

 

 

 

19/08/05()00:23:57 No.612138879

残念ながら今年の沖田さんにも水着は…

 

 

 

19/08/05()00:24:46 No.612139091

沖田さんの水着はあ゛り゛ま゛す゛

 

 

 

19/08/05()00:25:32 No.612139304

いいねぇ…

暗い所も含めての沖田さんだって良く分かる

 

 

 

19/08/05()00:26:29 No.612139546

乳上みたいにくっつかないルートの可能性

 

 

 

19/08/05()00:28:03 No.612139969

水着沖田さんは配布なんだ

俺は詳しいんだ

 

 

 

19/08/05()00:31:09 No.612140764

いつもいいとこでコフるんじゃがこの人斬りサーの姫

 

 

 

19/08/05()00:37:25 No.612142406

いいですよね目のハイライト消えた女の子

 

 

 

19/08/05()00:39:49 No.612143056

>いいですよね目のハイライト消えた女の子のハイライトを戻すお話

 

 

 

19/08/05()00:46:35 No.612144832

えっでも目のハイライト消えた子がもっと曇るのも…

 

 

 

19/08/05()00:47:55 No.612145159

話の展開的にハイライト戻ってるから!

 

 

 

19/08/05()00:50:46 No.612145824

つまりここからもう一段階落ちるイベントが

 

 

 

19/08/05()00:58:34 No.612147864

「」達の飽くなき曇らせ欲求はどこから来るの……?

 

 

 

19/08/05()01:01:46 No.612148681

実際最後まで曇ってほしいわけじゃないんだ

最後はハッピーエンドがいいんだ

それはそれとして曇ってほしいんだ