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19/07/30()22:32:17 No.610806851

「乾杯」

そう言って、三つのグラスを打ち鳴らす。民宿のリツカと私の部屋にリリィを招いて、簡単な食事会を開いていた。今日は七月三十日。この日から、私たちの旅は始まった。フユキで私とリリィが召喚されてから、私たち、そしてここにはいないマシュと四人五脚でやってきた。

「マシュがここに居ないのは残念だけど」

「じゃあ、カルデアベースに戻ったらまたやりましょう!」

「そうね。今さら一人抜きでなんて良くないもの。向こうでやるときはもっと本格的にしましょう?」

「そうしよう。ダヴィンチちゃんやホームズ達も一緒にさ。……あ、これ美味しい」

「ほんとですね。また腕を上げたのではないでしょうか」

「それは勿論。先生にはまだまだ及ばないけど、日々扱かれているんだもの」

ちなみに今日の食事の用意は全て私が行った。練習の成果の披露もあったが、この二人には自分の手料理を食べてみて欲しかったから。

 

 

 

19/07/30()22:32:33 No.610806958

「にしても四年かー。なんだか色んなことがあったというか、あり過ぎたよね」

「私召喚されたときのこと印象に残ってますよ。なんと言ってもマスターの第一声は忘れられません」

「やめて、リリィまでそのネタで弄らないで。人から改めて言われるとすっごい恥ずかしいから」

「くすくす。赤くなって、リツカったら可愛いわね」

可愛いと言われて更に恥ずかしくなったのか、目に見えて赤くなる。ほんとうに、可愛い人。

「そういうアナスタシアさんも最初の頃は雰囲気が違ったというか。私もマシュさんも、どう接したらいいか分からないくらい取りつく島もなかったんですよ?」

「うっ……」

急に矛先をこちらに向けられる。まさかリリィにそこを弄られるとは思っても見なかった。

確かに最初は、私は周囲に壁を作っていた。生前がきっかけで、人間不信に陥っていたから。でも、リツカが変えてくれた。凍てついた私の心を溶かしてくれた。

「お二人は今お付き合いされてますけど、私、あの頃からなんとなくこうなる気がしてました」

「え?」

 

 

 

19/07/30()22:32:53 No.610807063

「だって、マスターは冷たくあしらわれようと積極的にアナスタシアさんに話しかけて。アナスタシアさんも態度は素っ気なかったけどどこか嬉しそうで。二人はしっかりとお互いを思い合っていましたから」

「「…………」」

私もリツカも押し黙る。私たちのことをよく知っているリリィからそう言われるのは、とても恥ずかしかった。でも、私たちのことを、まるで自分の幸せのようにその素敵な笑顔で話してくれるリリィは、私たちを心から祝福してくれているのが伝わってくるから。顔が熱くなるのを感じる。私は堪らず、自分のグラスを煽った。

「そういえば、この前旅館に泊まった時から良くミルクコーヒーを飲んでるよね。気に入ったんだ?」

ふと、リツカがこっちに質問を投げてくる。彼も照れくさいのか、話を逸らそうとしているのだろう。私もそうしたかったし、乗っからせてもらおう。

「ええ。お風呂上がりの定番とリツカに教えて貰って飲んだ時から好きになってしまって。今まではよく紅茶を飲んでいたけど、なんだか新鮮だったから、つい」

 

 

 

19/07/30()22:33:30 No.610807263

準備の時に冷蔵庫の中を見るとラベルのないペットボトルに入っていた。悪いかとも思ったけど、今日くらいは無礼講で許してもらおうと思い、拝借してきた。いつもと少し味が違うような気もするけど。

「あ、この前の小旅行の時ですか。ちゅんちゅん亭はいかがでしたか?」

「ああ、うん。凄く良かったよ。近くの川に釣りに行ったんだけどさ――」

 

「あれ?アナスタシアさんもしかして寝てしまってますか?」

そうして他愛もない話を続けていると、隣でアナスタシアが船を漕いでいた。

「ねえアナスタシア、起きてる?」

「んー……。りつか…………?」

顔を覗き込んでみると、眠気からだろうか、目元がとろんとしている。もう半分微睡みの中だろうか。

「ごめんリリィ、もう半分くらいは眠っちゃってるみたい」

「まあ、食事の用意を任せきりにしてしまいましたからね」

「うん。だから悪いけど、今日はもうお開きってことで……ってうわっ!?」

リリィと話していると、突然背後から力が加わり押し倒される。下手人は勿論、今俺に馬乗りになっているアナスタシア。……なんで馬乗り?

 

 

 

19/07/30()22:34:02 No.610807469

そう思っていると、アナスタシアは俺にしなだれかかってきて、その体を俺に擦りつけてきた。色々と、柔らかいものが当たっている。まるで猫みたいだった。

アナスタシアの突然の豹変に面食らっていると、おもむろに俺の頭を抑え込み、そのまま唇を奪われた。

「…………!?」

いきなりの情熱的な口づけ。彼女らしからぬ行動に困惑する。一体どうしたのだというのか。眠そうにしていたと思ったら押し倒されていて。目もとろんとしているというか、熱っぽいというか。――――、もしかして。

「ねえリリィ、アナスタシアが飲んでた物って」

「…………これ、お酒ですね。殆ど分かりませんが、微かにアルコールの匂いがします」

やっぱりか。そんなカクテルがあった気がする、確かカルーアミルクといったか。一体誰だ、未成年もいる民宿の冷蔵庫に、ラベルも貼らずに酒を入れたのは。

そんな事を考えていると、またアナスタシアにキスをされる。しかし、今回は舌を入れられた。いつもされるがままの彼女とは思えない攻勢に、俺も受け身になってしまう。

「もう、だめよりつか。わたくしがあなたのこいびとなんだもの。リリィとばっかりおはなししてちゃだめ」

 

 

 

19/07/30()22:34:22 No.610807584

そう言って赤ら顔で蠱惑的に微笑むアナスタシアはいつも以上に色っぽくて。いけないと分かっていてもつい生唾を飲んでしまう。

「あら?のどがかわいてるの?それじゃあー……わたくしが、のませてあげる

そういうと、彼女はグラスに残っていた飲みかけのカルーアミルクを口に含む。と思った次の瞬間。

「んっ

「ンンッ!?」

三度、口づけ。今度は器用に唇で唇を割って開かれ、そこから液体が流し込まれる。ほろ苦さ、甘さ、唇の柔らかさ、絡められる舌の熱さーー。様々な感覚が脳裏を過ぎていって、口移しされていることを理解するのが遅れてしまう。溢れてしまった分が口の端から溢れる。ぴちゃぴちゃと、部屋の中に水音だけが響く。アナスタシアの咥内からカルーアミルクが無くなってもまだ口づけは終わらない。くちゅくちゅと舌を絡められながら、貪るようにキスをされる。

「りつか……りつかっ

息継ぎの合間に漏れ出す、脳を蕩かすような甘い声。ゾクゾクと、背筋を何かが通り抜ける。

 

 

 

19/07/30()22:34:42 No.610807679

「って、そうじゃないっ!リリィ、酔い覚ましの水を持ってきて!」

そうだ、彼女の酔いを覚まさないといけない。そう思ってリリィに助けを求めるがーー。

「す、すみませんマスター。私も、びっくりしてしまって。……こ、腰が抜けて動けないです…………」

ちら、とリリィに視線を向けると、力なくその場にへたり込んでいた。どうやら本当に動けないようだ。なんてことだ。頼みの綱は既に喪われていた。

「みず……?りつかはまだのどがかわいてるの……?」

俺の上のアナスタシアはそんな事を呟く。

「いやね、あのね。俺じゃあなくってね?」

「でももうミルクコーヒーはないし……」

まったく聞いていなかった。いやまあ分かっていたけど。

急に、アナスタシアが笑顔になる。まるで「いい事を思いついた!」と言わんばかりの。正直何か嫌な予感がする。

「ねえりつか。くちをあけて……?」

淫蕩な笑みを浮かべながら語りかけてくるアナスタシア。その言葉に従ってはいけないと頭は理解しているけど、その言葉には逆らえなかった。まさに魔性だ。

 

 

 

19/07/30()22:35:29 No.610807921

「ん……

口の中に熱い液体が注ぎ込まれる。アナスタシアの唾液だ。吐き出すわけにもいかないそれは、さっきのカルーアミルクとは全く違う甘さがあった。どこまでも溺れてしまいそうな、禁断の蜜の味。

思考が回らなくなってくる。先程飲まされた酒のせいか、それとも彼女の熱にあてられてしまったのか。だがしかし、流される訳にはいかない。酒の勢いで、なんて絶対に良くないし。……というか、リリィにガン見されてるし。

そうして始まったアナスタシアにとても情熱的に求め続けられるという天国のような生き地獄は、アナスタシアの酔いが回りきって寝潰れるまで続いた。

 

 

 

19/07/30()22:36:10 No.610808132

暫くの間、リリィと会うと真っ赤になって顔を逸らされることが続いた。アナスタシアはあの日のことをまったく覚えていなくて、なぜそんな反応をするのかと不思議そうにしていた。

 

備考:

次の日、ノッブに「なあマスター、わしのカルーアミルク知らんか?昨晩はあれで晩酌しようと楽しみにしておったのじゃが、いつのまにか無うなっててのう」と言われた。共用の冷蔵庫にラベルも貼らずに酒を置くのはやめてくれ、第六天魔王。

 

 

 

19/07/30()22:37:24 No.610808526

リリィにえっちなシーン見せちゃダメだよ!

 

 

 

19/07/30()22:38:22 No.610808823

ツァーリはいいとおもいます

 

 

 

19/07/30()22:42:40 No.610810187

よし短く仕上がったな!(当社比)

 

 

 

19/07/30()22:43:48 No.610810533

照れてるリリィも可愛いな…

 

 

 

19/07/30()22:47:23 No.610811699

皇女様がえっちすぎる……

 

 

 

19/07/30()22:56:53 No.610814745

どこまでしたんですか?リリィの前で…えっちしたんですね?