2019/03/26 01:07:04 No.578973324
「こふっ⁉」
幾度となく聞き、最早慣れ親しんだとさえ言える音と共に、彼女が血を吐き出す。慌てて口に当てたその手はしかし、止めるには遅く。溢れ出して床に赤い模様を描く。石榴のように飛び散ったそれは独特の匂いを撒き散らし、やがてどす黒く色褪せる。まるで命が尽きたかの様に。
「ず、ずびばぜ……ごふっ!」
くぐもった声に続いて二度目の吐血。短時間で連発するのは珍しい、などと頭の片隅でぼんやり思う。
彼女の白い手を、腕を……蛇のように伝って滴り落ちる血は、やがて桜色の着物に隠れて見えなくなる。その様は何故か、いつもより鮮やかに見えて。ある種の妖艶ささえ湛えているようで――
「げほげほ……っ、ふぅ……」
――どくん、と。心臓が大きく脈打つ。熱を帯びる。
唐突だった。何故かはわからない。今までこんな気持ちになった事すらない、こんな事を思った事はない……いや、あってはいけない――
彼女の血を
呑みたいと
思うなんて
2019/03/26 01:07:34 No.578973433
「きゃっ⁉」
逸る鼓動に耐えきれず、それに身を任せて乱暴に彼女の手を取る。その内からどろりと溢れたモノは、腕を伝う流れを増やし、あるいは床に赤く紅く飛び散る。それがどす黒く変色するより早く、指で掬う。ぬるりと生暖かい感触は、鉄のような匂いはしかし、不快さはなく。
「マス、ター……?」
訝しむ彼女を横目に、指を口へと運ぶ。その最中、指からぽたりと垂れて服に赤い染みを作る――勿体ない。
「っ……⁉」
驚きに彩られた表情を気にする事無く――いや、気にするだけの余裕など最早無く。禁断の果実を口にしたかのように鼓動が早まる。熱が大きくなる。高揚は魂を浮かせ、肉体と精神が乖離する。心臓が早鐘を打つ一方で、脳は至極冷静に血の味を覚え始める。
最後の一雫さえ残すまいと舌を絡め、しかし――
足りない
もっと……もっと、欲しい……!
2019/03/26 01:07:49 No.578973499
「マス――ひうっ⁉」
白い腕を持ち上げ、舌を這わせる。伝い落ちる赤い雫はさながら恵みの雨。天に昇るが如く、ゆっくりと赤色を拭い去る。
「や、ぁ……っ」
びくびくと震える腕は抵抗の意を示し始める。けれどそれはあまりに弱く――『病弱』を加味したとしても――悪戯に情欲を煽るだけで、興奮は止まらない。
「っ……ふぁ……」
腕、掌、指……その全てを、血ではなく己の体液が覆ったところでまだ足りない。むしろ制御を失い、どこまでも貪欲に欲し始めて――気付く。彼女の血が、溢れる場所に。
涎に混じった赤色が伝う、その場所に。
2019/03/26 01:08:07 No.578973563
ゆっくりと顔を近づける。何をするか察したのか、彼女の表情が強張る――けれど、打ち払うことはなく。サーヴァントの膂力ならば容易く行える事を、彼女はしなかった。
更に顔を近づける。緊張と懐疑、それから僅かの恐怖に彩られた瞳が、姿を隠す。
更に近づいて、互いの吐息がかかる距離。そして――
「っ……」
接触。
「――~っ⁉」
侵入。
瞼同様、固く結ばれた唇。舌を差し込み、ぬるりと滑り込む。残った血を求め、口腔を舐め尽くせば、溢れ出す体液で次第に鉄の味は甘く変わりゆく。
「っ、ぷは……ぁ」
十二分に堪能したところで、仕上げに一舐めし、唇を離す。そして嚥下。僅かに粘ついて喉に引っかかるような感触。それが胃に落ちると同時、身体が歓喜に打ち震える。
2019/03/26 01:08:24 No.578973633
次を求め、彼女を見やる。ぼうっとした瞳には僅かに恍惚の色。半開きの唇は、照明の光を受けて艶めかしく光る。
――どくん、と。またしても、大きく脈打つ。
この気持ちは、知っている。ヒトとして、生物として捨てることのできない衝動。
「ふ、ぁ……」
――上気した頬、溢れる吐息、甘く蕩けた瞳――
「ぁ……ます、たぁ……」
彼女の血に抱いていたはずの興奮は、いつの間にか全く別のものに切り替わっていたらしい。ゆっくりとベッドに押し倒す。
もっともっと欲しい
まだまだ足りない
彼女の、全てが欲しい――!
2019/03/26 01:10:50 No.578974143
あんたも吸血種だったとは知らなかったわ後輩
2019/03/26 01:16:08 No.578975387
パイセン少し黙って
2019/03/26 01:18:15 No.578975876
>あんたも吸血種だったとは知らなかったわ後輩
パイセンが爆発ばっかりするから吸血鬼になったんじゃぁ…
2019/03/26 01:17:30 No.578975714
20年くらい若返った気分だぜ
2019/03/26 01:19:31 No.578976156
ブラド公の仕業かもしれない
2019/03/26 01:20:10 No.578976274
メドゥーサさんにつまみ食いされてるしな...
2019/03/26 01:21:32 No.578976584
いくら人間嫌いだからって無理やり人間辞めさせなくても…
2019/03/26 01:22:35 No.578976794
あれ!?妖艶な沖田さんの話にならないのですか!?
2019/03/26 01:23:43 No.578977046
>あれ!?妖艶な沖田さんの話にならないのですか!?
今エロいのはどっちかっていうとマスターだし…
2019/03/26 01:24:16 No.578977166
ヴラド公だとしたらランサーのほうが泣きそうな顔して始末をつけそう
2019/03/26 01:29:55 No.578978339
エリちゃん的には?
2019/03/26 01:31:22 No.578978631
病人の血なんて美容に悪いわ!
2019/03/26 01:33:14 No.578979014
>病人の血なんて美容に悪いわ!
心配するのは体調じゃねぇかな…
2019/03/26 01:46:14 No.578981113
そう言えばFateも伝奇村出身だった
2019/03/26 01:51:13 No.578981917
すけべ過ぎる文章ありがとうね!
2019/03/26 01:57:02 No.578982788
ねっとりした描写いいねぇ……
2019/03/26 02:12:29 No.578984954
えっちぃ…
元スレ:http://img.2chan.net/b/res/578973324.htm
【FGO】アンデルセン怪文書 ────女の話をしよう【カルデア病院】
沖田さん怪文書 明治維新編 好感度上げは慎重に
【FGO】ヘクトール怪文書 意外と重たいおじさん
コメント
コメント一覧 (22)
アリエス
がしました
アリエス
がしました
アリエス
がしました
アリエス
がしました
アリエス
がしました
上姉様辺りから簡単に神性の血も吸えそうだし
アリエス
がしました
薄い本では人気なのになー
アリエス
がしました
アリエス
がしました
アリエス
がしました
アリエス
がしました
アリエス
がしました
アリエス
がしました
コメントする